社会人になってみて
私も、生活習慣が改善されました。大学院にいた時は、自分の研究ペースにあわせて、昼夜関係なく研究室で過ごしていました。それだからか、就職して最初の一週間は、昼間の眠気と戦っていましたね(笑)。
私は文系ではなく理系出身ですが、規則正しい生活を送るようになったのは、私も社会人になってからですね。学生の頃は自堕落な生活で、いつも夜更かし気味。前日に「さて、明日は何をしようかな。」と考えていた。社会人は、自分の裁量だけでは予定は決められないし、当然朝寝坊もできません。毎日の通勤に適応できるか、最初は不安でした。
私の場合は、昔から「早寝早起き」で。生活習慣という面では、特に変わっていません。ただ、週末の使い方が変わりましたね。学生時代は、土日はアルバイトに追われていましたが、就職して、アルバイトはしなくなって、自由な時間が増えた。最近は、週末、本を読んで過ごすことが多くなりました。
学振での仕事―
入職前とのギャップ
正直なところ、学振で働く姿をあまり想像しないまま入職しました。独立行政法人なので、いわゆる「お役所」の仕事なのかな、程度の感覚でしたね。それが、実際に働くと、「自分が仕事をしている感」のようなものをひしひしと感じます。私は、入職して最初の担当は海外特別研究員事業で、募集から採用、そして採用後の日常管理まで、一連の事業運用に携わっていたのですが、一巡(担当して一年が経って、二年目)したあたりから、自分が事業を担っている感覚が湧いてきました。例えば、採用者向けの手引きを作るにしても、課内で何度も打合せを重ね、できるだけ採用者目線に立って、わかりにくい記載は修正したり、削除したり。採用者からの問い合わせ対応もかなり多かったですね。当時、採用者からの要望を受けて、採用期間中の一時帰国に関する制限を緩和しましたが、それを手引きに反映したことも鮮明に記憶に残っています。
私が担当している外国人特別研究員事業でも、常に制度の改善に取り組んでいて、採用者向けの手引きの改訂は毎年度行っています。そこでは、意外と若手職員にも裁量権があって、上司に提案をしやすい。「お役所」的な面もありつつ、可能なところでは業務効率化、改善を目指しています。
私も、学振は「お役所」というイメージで入職しましたね。「お役所」の仕事=ペーパーワーク、と勝手に想像していましたが、実際は業務の電子化が進んでいます。コロナ禍に入職したことも関係しているのでしょうが、電子決裁、オンライン会議、コラボレーションツールを活用しての職員同士のコミュニケーション等、盛んです。また、会全体として、業務の電子化の流れがあって、システムを作る仕事が多いなとも感じました。これは、就職前には全く想像していなかったところです。学振の学術国際交流事業や科研費等の申請は、電子申請システムを通じて受け付けていますが、私は現在、この電子申請システムの管理運用に関する国際部署の取りまとめ役をやっています。国際各課の要望をまとめ、それをシステム開発会社に伝え、改修に向けて話し合う。システム開発会社は、様々な提案をしてくださるわけですが、その内容を理解して、各課に伝える。学生時代、システムを学んできたわけではないので、専門用語等わからないことだらけで。勉強が必要ですね。
私は、入職直前に「最初の配属先は会計課」という内示を受けて、経費の精算書類を着々とさばく姿が頭に浮かびました。でも、就職してみて、会計課は契約業務や予算の管理、経費に関する突発的事項への対応等、多種多様の仕事をしていることを知りました。インボイス制度への対応業務も、最近の大きな動きです。あとは、先程のT.Sさんの話ともリンクしますが、学振では、各課の予算執行管理や各種支払案件の申請手続を財務会計システムにて行っていて、会計課でもシステム関連の知識が求められますね。わからない時には、情報システム室の職員さんが丁寧に教えてくださり、助かっています。どの業務案件も、基本的には課長や係長がリーダーになって動いていますが、フォロワーである若手係員の役割も結構大きいです。
係員の役割が大きいというのに絡んで、学振の新人は、採用直後の一斉研修が無く、採用初日から配属の課に自分の机が用意され、他の先輩職員と同様に仕事にあたりますよね。電話も取ります。あれはインパクトが大きかった。びっくりはしましたが、業務に慣れるにはOJTが一番手っ取り早いのかも。
そうですね、原議書の作り方、仮想デスクトップの使い方など、「やってみながら覚えていく」が多いですね。
職場の様子
穏やかですね。人といい、執務室といい。ドラマで出てくる、ざわざわしていて、どこかで電話が鳴っているようなオフィス風景とは全然違います。
はい、それでいて、相談をしやすい。文部科学省や大学からの出向者、特任職の方(任期付き採用の方)、それぞれ異なったバックグラウンドをお持ちですが、立場に左右されることなく、教えてほしいことを気兼ねなく質問できるし、それに対して親身に答えてくださる。嬉しいですね。ちなみに、レクや昼食会で理事長とお話しできることがありますが、理事長もとても気さくな方で、役員との距離も近いと感じます。
今、出向者の話が出ましたが、職員の入れ替わりが多い組織です。出向者の異動あり、プロパー職員の異動ありで、毎年4月にはごっそりと課内の顔ぶれが変わります。「まだ1年しか経っていないのに、もう異動?寂しいな~。」と思うこともありますが、新しい人と知り合って新鮮な気持ちで仕事を進められるのは、楽しい点でもあります。
学校で言う、席替えみたいな感じですね(笑)。周辺の顔ぶれがドッと替わる。
職員同士、気軽に話ができる環境である一方で、それぞれに担当業務が割り振られていて、各自粛々とこなしているという雰囲気もありますね。一人一人の責任が重い。でも、係で定期的にランチ会を開催して、チームとしてのコミュニケーションは大切にしていて。このあたりは、部や課によるのかもしれませんが、少なくとも国際部署はそんな感じです。
私も、採用1年目はそうだったかもしれません。当時はリンダウ・ノーベル賞受賞者会議派遣事業を担当していたのですが、申請の受付から審査、採用、採用者の派遣に向けた準備まで、自分一人に任せてもらえました。小間切れではなく、一連の業務を経験できたからこそ、覚えられたことは多かったですね。
新しい働き方 ― 在宅勤務
コロナ禍では、感染拡大防止のためにローテーションで在宅勤務を行い、週1日しか出勤できない時期もありました。コロナが5類に移行して、最近では大きな会議や海外からの表敬訪問の対応もあり出勤することがほとんどですが、業務が落ち着いていて支障がない場合には在宅勤務をすることもあります。在宅勤務は、仕事が終わったら、即プライベートに移れるので、仕事と私生活との両立には便利ですね。
在宅勤務の制度はありますが、実際に在宅勤務をするかしないかは課によるんですよね。在宅で取り掛かりやすい業務が多い課もあれば、出勤しないと支障の出る業務を行っている課もある。私の場合は、職場の方が仕事に集中できるので、基本出勤です。家のモニターは、仕事をするには小さいかな。
私の課では、積極的に在宅勤務の制度を活用しています。制度上、週2回は在宅勤務を行えることになっていて、私も業務の都合を考えながら週1~2回在宅勤務をしています。プライベートの充実に役立ちますね。家のモニターは、大きいものに買い替えました(笑)。
会計課は、私を含めて多くの職員が基本出勤です。やはり、契約書とか、支払の証憑とか、どうしても紙でしかできない仕事が多いのですよね。あと、職場で良好な人間関係を築くには、出勤して、顔を合わせるのは大切かな、と。私は、例えば、オンライン研修を受講する日は家でじっくり視聴した方が頭に入るので在宅勤務にする、といった風に在宅勤務の制度を活用しています。
ワーク・ライフ・バランス
休暇はとても取りやすいです。至急の仕事や、どうしても外せない会議等あれば別ですが、直前に申請しても、上司にも同僚にも気持ちよく受け入れてもらえます。休暇の理由をいちいち尋ねられることもありません。趣味の昆虫採集に行く時は、天気を加味して予定を立てたいので、直前まで天気予報を見て、前日に休暇を申請したこともありました。
子育て中の職員で、子どもが突然発熱した場合も、スムーズに休暇を取れていますね。
自分が休暇を取ったとしても、誰か別の職員が代わりを担える体制ができていることが大きいのではないでしょうか。それに、直属の上司が休暇中でも、困ったことがあったら、別のどなたかが助けてくれます。私は、係長と一緒に「月一日、年休取得キャンペーン」なるものを始めました(笑)。
そういうの、良いですよね。私も、以前上司からのメールで「積極的に年次有給休暇を取得しましょう。」と課内の職員全員に送られてきたことがあって。ああいった呼びかけを上司がしてくれて、年休を所得しやすい雰囲気が広がります。
夏季休暇もきちんと取得できていますよ。夏季休暇と言っても、学振の場合は一斉休業ではなく、職員それぞれの予定に合わせて取得できますし、取得可能な期間も6月から10月までと幅広いので、夏季休暇を活用したリフレッシュの選択肢が多いです。旅行するにしても、トップシーズンを避けられるので、少しお得に旅ができます。今年度は10月に宮崎に行ってきました。
私も、10月に夏季休暇を取って、温泉に行ってきました。夏季休暇も、年次有給休暇も、業務過多な時期を除いて、ほぼ希望通りに取れます。繁忙期を除いて、残業時間もそこまで多くないので、勤務終了後に習い事をしたり、家事を進めたり。その結果、土日に時間の余裕が生まれ、有意義に過ごせます。
産休、育休ももちろん取れます。育休明け後、女性職員は短時間勤務で子育てと仕事との両立を図っています。皆さん、限られた時間の中で、てきぱきと仕事を進めていますね。私の場合、前任者は未就学児を育てている職員(男性)なのですが、夫婦共働きというのもあって、育児は奥さんと分担、協力している。できる限り定時で仕事を切り上げて、お子さんの保育園へのお迎え、入浴、夕食のお世話をしているようでした。今自分がどうにかこうにかこなしている大量の業務を、その前任者はどうやって時間内にさばいて育児と両立していたのか、時間の使い方のコツを教えて欲しいな、といつも思います。
仕事とライフイベントとの両立支援に関する制度については、
こちら(「仕事と生活の両立への支援」)にまとめています。
研修制度
海外対応機関からの表敬訪問の対応で英語を使うこともあって、自己啓発(語学)研修の制度を利用して、英会話学校に通っています。学振は、語学を学べる研修が充実しているし、それぞれの職員の必要性に応じて、どこで何をどう学ぶのかを職員自ら選択できます。私は、仕事をしながら通い続けやすいように、通勤経路の途中にある英会話学校で、週2回、マンツーマンのレッスンを受講中です。
私は、自己啓発(語学)研修で、英語とフランス語を勉強しました。こんな風に、2か国の外国語の習得にもチャレンジできます。英語はオンライン講座、フランス語は通学しての受講でしたね。自己啓発(語学)研修終了後も、語学の勉強は続けたかったので、今はスキルアップ研修の制度を活用して英語とフランス語の講座を受講しています。今後も語学力を磨いて、海外研修にも挑戦したいですね。将来的には、英語力とフランス語力を活かしてストラスブール研究連絡センターで働きたいと思っています。
スキルアップ研修も、自分の業務に関連する範囲で、何を学ぶか自身で企画できて、いいですよね。私は、今は何も受講していませんが、今後スキルアップ研修を利用して、PCスキル、資料作成やデータ処理に役立つスキルを習得してみたいなと思っています。
私は会計課にいることから、昨年度、財務省主催の政府関係法人会計事務職員研修を受講しました。学振の中で行われている研修だけでなく、こういった他省庁と横断的に開催される研修に参加する機会もあります。この会計事務職員研修ですが、約1か月半に亘って行われ、最後には試験もあって。大学生に戻ったような感じで、大変ではありましたが、簿記、独立行政法人の会計基準等、幅広く勉強でき、良い経験となりました。
その他ですと、私は放送大学の科目履修の制度をよく使っています。こちらは、教養を深めるのが目的で、法学、心理学等、分野を問わず、興味のある科目を履修しています。社会人として、幅広く色々な学問を知っていたい。知識、話題を多く持っていることは、仕事にも繋がりますからね。
私もその制度で、財政学を受講しています。身近で国際部門の予算要求が行われているのを見て、財政学の知識や考え方が必要だと思いまして。周囲の職員には、語学関連の科目を取っている人が多いですね。放送大学の授業は、自分の予定に合わせて動画で受講できるのが便利です。
主な研修制度については、
こちら(「主な研修」)にまとめています。
修士課程の経験の価値
修士課程に進んで、学術研究の世界を実感できたことは大きかった。「研究の意義」とは何か、胸を張って言えます。だからこそ、学振での仕事にモチベーションが湧いてくるわけです。もともと昆虫採集が好きだったので、学部生時代の卒論はどこか趣味の延長のような感じで、研究に対しての意識は低かったように思いますし、学振のこともほとんど知りませんでした。修士課程での研究活動を通じて、基礎研究を含む学術研究に対する考え方やその重要性を、身を持って実感できました。
私は文系の修士ですので、読解力を鍛えられた修士課程2年間でした。修士課程で身に着けた読解力は、仕事に活かされていると思います。業務では、沢山の書類を、速く、正確に読むことが常に求められます。その意味で、じっくりと時間をかけて読み進めることができた学生時代とは大分異なるわけですが、修士課程で磨いた読み込む力は、これから働き続けていく中で大切にしていきたいです。
その感覚は、私も同じですね。修士課程では、英語の論文を大量に読みました。英語の長文を、スピード感を持って段落ごとに大まかに読み進め、判断する。業務では、英語も含めて、長文のメールをさっと読み、「何を求められているのか」即時に判断する必要がある場面が多いですので、修士課程で身に着けた読解力は、確実に仕事に活かされています。あとは、自分が博士課程には進まなかった分、博士課程以上に進んで研究に励む優秀な研究者を支えたい、という思いが湧くというところでしょうか。
就職活動中の方へのメッセージ
T.S.
役所、政府関連の機関の職員は、法学部や経済学部出身者が多いというイメージがあるかもしれませんが、学振職員の出身分野は実に様々です。これからも、色々な分野を専攻した人に集まっていただき、一緒に働けるのを楽しみにしています。OB、OG訪問は随時受け付けていますし、最近の動きとしてインターンシップを始めました。是非、実際に学振に足を運んで、職場の雰囲気を感じてみてください。
J.H.
そうですね。文系の人が多い感じはしますが、私のように理系もいます。多様性というか、バックグラウンドが違うと学術に対する見方もそれぞれで、刺激を受けることも多いです。自分の経験からすれば、理系の院生には、事務職への就職に抵抗をお持ちの方もいらっしゃるかと思いますが、業務内容より、その先にある組織の目的が自分に合っているかを考えた方が働きやすいのかもしれません。
N.O.
組織で働くには、適応能力が大切だと思います。自分も含めて、異動がありますから。仕事でも、仕事以外でも、思い通りにいかないことは沢山あるかと思いますが、様々な経験ひとつひとつが自分の糧になりますので、前向きに考えられる方をお待ちしています。
N.H.
もちろん、仕事なので楽なことばかりではありませんが、私にとっては、大学院を修了してからもアカデミアの隣で働けることは大きな喜びです。研修が充実してきているのと、若手が上司に提案できる雰囲気のある職場ですので、好奇心旺盛で改善意欲のある方に楽しんで働いていただけるかと思います。
規則正しい生活になりましたね。私は文系出身ですが、文系人間の生活は自由でそれぞれに任されている雰囲気。それが、就職して半年後から一人暮らしを始めて、夕食の自炊なんかにも挑戦して、整った生活に変わっていきました。